マリッシュを使っていて、今でも印象に残っている初デートがある。
相手は、プロフィール写真の雰囲気からして「女子アナっぽいな」と思わせる女性だった。派手さはないけれど、清潔感があって、言葉選びが丁寧。自己紹介文も感情的ではなく、落ち着いた文章。正直、マリッシュの中では少し異質だった。
メッセージのやり取りは淡々としていた。
質問攻めでもないし、距離を詰めてくる感じもない。こちらが一文送ると、相手も同じくらいの分量で返してくる。そのテンポが心地よく、「あ、この人は無理をしない人だな」と感じた。
初デートは、昼間のカフェだった。
場所も時間も無難。マリッシュらしい慎重さがあったし、こちらもそれに安心していた。実際に会ってみると、写真の印象とほぼ変わらない。話し方も落ち着いていて、周囲への気配りが自然にできるタイプ。元アナウンサーかどうかは分からないけれど、少なくとも「人前に立つ仕事をしてきた人」の空気はあった。
会話は仕事の話や、休日の過ごし方、これまでの人生の選択について。
恋愛の話はほとんど出なかった。だからこそ、距離感は終始フラットで、初デートとしてはかなり穏やかな時間だったと思う。
変化があったのは、店を出て少し歩き始めた時だった。
信号待ちで並んで立っていた瞬間、彼女が自然にこちらの手に触れてきた。驚くほどさりげなく、ためらいもなく。こちらが何か言う暇もないくらい自然な動作だった。
正直、少し戸惑った。
マリッシュは慎重な人が多い。初デートで手を繋ぐ展開は、これまでほとんどなかったからだ。でも、彼女の表情は落ち着いていて、変に距離を縮めようとしている感じでもない。ただ「一緒に歩く流れの中で、そうした」という空気だった。
そのまま、何事もなかったかのように歩き続けた。
会話も変わらない。手を繋いだからといって、急に甘い話になるわけでもない。そのギャップが、逆に印象に残った。
この時感じたのは、距離の縮め方は人によって本当に違うということだ。
慎重そうに見える人が、ある瞬間だけ直感的に動くこともある。逆に、言葉では積極的でも、行動は最後まで踏み出さない人もいる。
その後どうなったか、詳しくは書かない。
期待した通りだった部分もあれば、そうでなかった部分もある。ただひとつ言えるのは、マリッシュには「年齢や条件だけでは測れない瞬間」が、確かに存在するということだ。
初デートで手を繋いできた、あの自然な動作。
それは恋愛の成功を約束するサインではなかったけれど、少なくとも「この人は嘘をついていない」と思わせるだけの説得力はあった。
マリッシュは、派手な出来事は少ない。
でも、こういう静かな驚きが、たまにある。
だから、完全にはやめられないのかもしれない。


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